トップページ > 医療従事者の方へ > 専門医に聞く

専門医に聞く

「専門医に聞く」は、最前線でご活躍されている小児内分泌の専門医の先生に、施設の取り組みや成長ホルモン治療を行うかかりつけの先生へのアドバイスをお聞きしたコンテンツです。

第一回 成長ホルモン補充療法における留意点 (1/2)

診断の基本的なルールに立ち戻ることが大切

広島赤十字・原爆病院小児科部長 副院長 西 美和 先生

広島赤十字・原爆病院小児科部長として日々、診療に携わっている西美和先生に、成長ホルモン治療の開始時期についておたずねしました。

西美和先生

診断・治療の出発点は成長曲線作成
詳しい検査か、経過観察か、成長曲線で確認を

― 成長ホルモン補充療法の開始時期については様々な議論が行われています。
治療の開始時期について、ご意見を伺いたいのですが。

成長ホルモン分泌不全性低身長症(GHD)は早期診断、早期治療が重要です。ただしそれは成長ホルモンの完全欠損の場合で、すべてのケースで、早ければ早いほどよいということではありません。

例えば、2歳くらいでマイナス2SDの子が、3、4歳になるとマイナス3SD…と明らかに成長曲線の伸びが悪くなる場合は、成長ホルモンの完全欠損も疑われるため、早期に診断・治療を開始していくことが必要です。ただし、伸びが悪くなるのは甲状腺機能低下症、ターナー症候群などもあります。しかし、マイナス2・5SDくらいの所で標準のラインと平行に伸びているのは、必ずしも完全欠損とはいえないため、経過観察をしながら少し見極めることも必要だと思います。

成長ホルモンの分泌がやや悪いだけの子に成長ホルモン補充療法を行うと、場合によっては骨年齢が促進し、身長が低いのに二次性徴の発来が来ることで最終的には治療しない場合よりも成人身長が低くなる可能性があるという報告もあります。

また、早期発見・早期治療が拡大解釈されて、身長はそんなに低くなくコンスタントに伸びているにもかかわらず成長ホルモンの分泌量を調べる負荷試験を積極的に行うのも気になります。本当に早期発見・早期治療が必要なのは成長ホルモン完全欠損の場合であって、そうでない場合は、今お話ししたような、見極めが必要になるからです。

低身長=成長ホルモン欠損症、低身長=成長ホルモン補充療法可能と安易な判断を行わずに、診断の基本的なルールに立ち戻り、成長曲線で確認しながら、詳しい検査をすべきか、経過観察でいいのか、大方の見当をつけなければならないと思っています。

グラフ