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専門医に聞く

「専門医に聞く」は、最前線でご活躍されている小児内分泌の専門医の先生に、施設の取り組みや成長ホルモン治療を行うかかりつけの先生へのアドバイスをお聞きしたコンテンツです。

第三回 子どもの成長と成長ホルモン治療コンプライアンス遵守(1/2)

あせらずに、子どもの成長に合わせて、ゆったりとした気持ちで見守る

熊本大学医学部 発達小児科 助教 間部 裕代 先生

熊本大学大学院生命科学研究部の小児発達分野で、小児の成長発達に関する多領域の研究をすすめる一方で、日々、成長ホルモン分泌不全性低身長の治療に携わってこられた間部裕代先生に、子どもの成長にともなう治療コンプライアンス上の課題についてお話いただきました。

間部 裕代 先生

導入期のコンプライアンスを維持する上で、
大切にしていらっしゃることは何ですか?

親の思いが先走らないようにすることが大切です。未就学の時期から始めた子どもは「小さいことはいやなこと」とは思っていません。周囲から「かわいいね」と言われるのでコンプレックスに思わないのです。ところが親は「この子のために、何としても注射を」との思いから、泣く子を羽交い絞めにしてでも注射をしようとする、これでは子どもの心に傷を残してしまいます。

ですから私は、親御さんたちには、あまり思い詰めないでゆったりした気持ちを持つように指導しています。例えば、週に1日注射を休むスケジュールにして、その1日はどのように使ってもいい、風邪で熱が出た時、旅行の時にはその1日を使って休めばいい、というようにしています。また、泣いて嫌がる場合には、夜熟睡してから打つことも勧めています。こうすることで、親御さんの先走った気持ちを楽にすることができます。そして何より、思い詰めないように、気軽に相談してくれる関係をつくることが大切です。

小学校低学年の時期はいかがでしょうか?

小学校に入学してクラスで背の順に並ぶと、自分だけ小さいことが分かり、「なんか自分だけちがう」と思うようになります。この頃になれば、子どもは自然に治療を受け入れるようになります。ですから、それまではじっくりあせらずに待つことが大切です。

定期受診にきた時には身長と体重を測って成長曲線に記入し、「ほら、前の時からこれだけ伸びたよ、すごいね」と示してあげます。この頃の子どもは論理的に考え始める頃ですから喜びます。治療を継続する大きな動機づけになります。

小学校高学年になると、自己注射に切り替える子どもが多くなるかと思いますが、スムーズに移行するための留意点をお教えください。

ここでも親の思いが先走らないようにすることが大切です。「大きくなったのだから自分のことは自分でさせなければいけない」との親の思いで無理強いしてはうまくいきません。子どもの自然な気持ちの変化を待ちます。例えば、定期受診の時に注射の話になって、「お母さんの注射、痛いんだよな」と言ったとします。「そう、それじゃあ自分で打ってみる?人が刺すと、いつ刺すのかと緊張するから痛く思うんだよ、自分でした方が痛くないよ」と話をすすめます。

新しいデバイスが出た時もいいチャンスになります。この頃の子どもは機械や道具に強い関心をもっています。最近新しく出た電子デバイスは、ゲーム感覚で興味をもち、操作方法は親より早く覚えてしまいます。そのタイミングで「面白そうだから自分でやってみる?」と誘います。大抵はこうして無理なく自己注射に移行できます。しかし中には、どうしても自分で打つことを嫌がる子もいます。そのような子には準備だけでも自分でするようにさせます。それでも充分に意味があることだと思います。

すべての子どもが自己注射に移行しなければならない訳ではありません。子どもの心の成長はそれぞれに違います。自己注射できずに最後までお母さんが打つケースもあります。それでもまったく問題はありません。