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専門医に聞く

「専門医に聞く」は、最前線でご活躍されている小児内分泌の専門医の先生に、施設の取り組みや成長ホルモン治療を行うかかりつけの先生へのアドバイスをお聞きしたコンテンツです。

第四回 継続できる成長ホルモン治療:コンプライアンスから
アドヒアランスへ(1/2)

患者さんが 納得して 積極的に治療に参加する姿勢が、何より大切

岡山済生会総合病院小児科 診療部長 田中 弘之 先生

小児内分泌学、骨代謝学を主要な専門研究分野として多くの学会でご活躍の一方で、小児の成長ホルモン治療で豊富なご経験をお持ちの田中弘之先生に、患者さんご家族が積極的に治療に参加するためのポイントについてお話いただきました。

田中 弘之 先生

成長ホルモン治療を継続していく上で、先生がいちばん大切にしていることは何でしょうか?

まず大切なことは、患者さんに納得して治療に参加してもらうことです。治療を開始する前に、「この子の低身長は病気であり、病気なのだから治療するのだ」ということを、しっかりと理解してもらうことが必要です。成長ホルモン分泌不全は他の身体機能にも影響を及ぼすこと、そのために将来的にはどのような病態が考えられるか、それを予防するためにも治療が必要であることを説明します。この認識をあいまいにしておくと、「注射が面倒だ」「この程度伸びればいいだろう」と患者さん自身の判断でドロップアウトしていくことになるのです。

患者さんが指示どおりに注射しているかの確認はどのようにしていらっしゃいますか?

定期的にIGF-Iを測定することが基本です。治療を開始するとIGF-Iは正常範囲に上昇しますが、その上昇した値が下がってくることがあれば、それはスケジュールどおりに注射が打たれていないか、栄養状態が極度に悪化したためと判断できます。
しかしこれは管理する立場の医師の視点です。この治療で大切なことは、患者さん家族が納得して治療に参加することです。医師の考えの一方的な押しつけでは長続きしません。 患者さんに治療記録をつけてもらうことも有効な方法です。もしかすると正確な記録でないかもしれません。しかし受診日に、その記録を見ながら日常の様子を話してもらうことで、良い信頼関係をつくりだし、患者さんの積極的な治療参加の姿勢を引き出すことができるはずです。

患者さんが毎日使うデバイスはどのように決めていらっしゃいますか?

デバイスは患者さんが愛着をもって使えるものでなければなりません。それ故、私は導入時に、タイプの異なるデバイスを提示して、それぞれの長所・短所を説明し、患者さん自身に選択してもらっています。このことも患者さんの積極的な治療参加を引き出すことにつながっていると思います。
 投与履歴が残るタイプの電子デバイスも選択肢の一つになります。投与履歴が確実に残ることが大きく評価できるポイントです。患者さんの中には、「少しだけ注射を忘れました」と言っていて、実はほとんど注射できていない方がいます。これでは治療効果はまったく期待できず、副作用の心配もしなければなりません。そのような場合には、検査データや成長曲線と併せて投与履歴を示しながら、「あなたの成長はこれまで順調だったのに、少しブレーキがかかっています。何かが少し悪いようですね」といった説明をし、再度、患者さんの治療意欲を高めるようにします。